人間としての「強さ」とは結局のところ何なのか

田舎に暮らす平凡な15才の少年。進学競争に敗れた兄が壊れた時から、苛酷な運命に翻弄されていく。
孤独と向き合う強さを求めて、同じような運命を負ってなお強く生きる少女に惹かれるが、彼女にもさらに苛酷な運命が襲いかかり、彼の前から姿を消す。彼を助けようとしてくれた大人たちもまた運命に翻弄される弱い人々であると知ったとき、彼は一人で生きるために故郷を出ることを決意する。
とにかく「これでもか」というほどの苛酷な運命。犯罪者の家族であるということがどのような意味を持つのか、ということがとことんまで突き詰めて描かれる。村八分。いじめを通り越した、名前のない何か。家族の崩壊。貧困。そして誰も助けてくれないという孤独感。
この小説に描かれる状況は全て確かに「誰にでも起こりうる」ことであり、それだけに、今まさに自分の目の前で物語が起こっているかのようなリアルな手触りがある。犯罪者の家族となったとき、またその近くにいたとき、あなたに何ができるか。何をなすべきか。何をなすべきでないか。そして人間としての「強さ」とは結局のところ何なのか。考えさせられる一冊です。