高市早苗氏が処理水について周回遅れの主張をしている件について

高市早苗氏が福島第一原子力発電所内の処理水への対応についての考え方を述べた記事を見つけた。

高市早苗氏が考える 福島「処理水」風評被害払拭に必要な“2つのポイント”(ニッポン放送) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/bf778a3fddec0ea372aecc5d046d63c613837d7a?page=2

氏の主張は概ね次のようなことのようだ。

(1) 建屋にテントを張って、建屋自体にも止水工事をせよ。
(2) 漁業者と輸入制限を課している諸外国に説明を尽くして風評被害をなくせ。
(3) 他にも選択肢はある。(処理水の処分方法についての主張のようだ)
(4) 処理水を放出するのはそれからだ。

まず(1)については、すでに計画され着手されていることで、何ら目新しい主張ではない。

福島第一原子力発電所の汚染水処理対策の課題と対応
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/osensuisyori/2021/pdf/23_14.pdf

次に(2)についてもすでに政府と東京電力が方針を明確に示しており、何ら目新しい主張ではない。風評被害を減らす努力を行いつつ、実際に発生した被害については補償するというのが現在の方針だ。

福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の取扱いに関する検討状況について|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社
https://www.tepco.co.jp/press/release/2021/pdf3/210825j0101.pdf

これらの対応は処理水の放出に向けた準備と並行して実施されるものであり、どれが先とか後とかいうものではない。

(3)については、処理水について海洋放出以外の方法も含めて政府と東京電力が公募のうえで検討してきて、他の方法はまだ技術的に確立されたものではなく、他国の原子力発電所における普遍的な運用方法である海洋放出を選択すると政府方針が決定されたものであり、つまり「他の選択肢」はすでに検討された上で除外されている。

最後に(4)については、汚染水は減らせるが発生を完全に止められるのはまだ先のことであり、福島第一原子力発電所構内にこれ以上タンクを増設できる場所がなく、廃炉に向けた他の作業を進める観点からもタンクの数を減らすために海洋放出を始めるべきと政府が判断したものだ。

つまり高市早苗氏の主張はすでに検討されたものをまだ検討していないかのように言っているだけで、周回遅れの主張である。

いまさらこのような主張で誰の支持を得ようとしているのか。何を達成しようというのか。決断を先延ばしにして廃炉に向けた作業を滞らせて、誰が幸せになれるのか。

氏の選出区である奈良県民の皆さんは、ぜひ彼女に意見を述べて、これまでの10年間に積み重ねられてきた長い議論をひっくり返すような有害な主張をやめさせていただきたい。