ヘルシンキ滞在4日目

6月18日
朝から雨。時折強く降る。

お高いホテルに泊まっており、朝食も料金に入っているので、毎朝シャワーを浴びて着替えてからしっかり食べている。

Buffetの料理を取ってきて適当に座ると、スタッフがすっとやってきてコーヒーのポットを置き、オレンジジュースをグラスに注いでくれる。
Good morning. Tea or Coffee?…Coffee, please…And how about orange juice?…Yes please…Thank you…You're welcome!
英会話教室のテキストのような会話だが、適切な姿勢と動きとタイミングというものがあり、訓練されていて、嫌味に感じない。職業に自信と誇りを持って取り組んでいることがわかる。こちらも嫌味なく自然にありがとうと言える、そのような文化が欧米には根付いている。
食事もパンとかソーセージとかスクランブルエッグとか、ポットで給仕されるコーヒーとか、ありきたりなものばかりなのだが、いちいち美味しい。
料金の高いホテルってそういうところがあって、彼らが提供する文脈にそって暮らしていればとても快適に過ごせる。
会社の金だけど。

今日はバンで移動して別の施設でワークショップ。Windows7パソコンの言語が当然のようにフィンランド語で、どこをクリックすれば何が起きるのか全く予想できない。気合いでとりあえずキーボードだけは英語に変える。あとは講師の指示に沿ってソフトウェアを立ち上げ、コマンドを入力してどうにか作業を波に乗せる。最近練習していたショートカットが役に立つ。Windowsボタンは飾りじゃないよ。

16時前にホテルに戻ってきて、仕事は完全にお開きになる。日本人の営業の人が来て、このあとアジア人で夕食でもどうですか、というのでありがたくご一緒させてもらい、中国人ペアと台湾人ペアと合流。

中国人ペアが観光したい場所があるということで、路面電車で移動。路面電車では忘れずに1日フリーのチケットを買う。フィンランド人の参加者も乗り合わせたので、降りる駅を教えてもらっている。彼はこれから休暇で帰省するということで、電車で別れる。

路面電車を降りてしばらく歩いて案の定、道に迷う。台湾人ペアの男性がGPS付きのスマホを取り出して道案内を始める。なかなかたどり着かないが、This wayと力強く言うので、みんなホントに大丈夫?とか言いながらも大雨の中傘をさしてついていく。

右に曲がったり坂を上ったり左に折れたりしていると、やがて目の前に、岩山に屋根を乗せたような工事中のオブジェが現れる。よく見ると、ホントに岩山に屋根が乗っている。テンペリアウキオ教会
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岩山をくり抜いて屋根を乗せた教会を、1959年に作ったのだという。壁をよく見ると、縦にボーリングを仕掛けたとおぼしき細い縦の筋が等間隔にたくさん並んでいる。
教会としてはドカーンと広い円型のスペースに椅子と祭壇をしつらえてあるシンプルな教会だが、でかいパイプオルガンが置いてあって、なかなか年季が入っている。表面の板やパイプはそれなりに傷んできていて、多分、換気があまり良くないのだろうと思う。
ここでも2ユーロで蝋燭を寄進する。

次は買い物がしたいと中華チーム4人が言い出し、移動しはじめる。途中おみやげ屋さんもあるが、ちょっと覗いて、ここは値段が高いから他をあたる、という。
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スルーされたおみやげ屋さんの前で、トナカイの剥製が雨に濡れている。撥水加工してあるらしく、びしょ濡れ感はない。

営業の人が、寒い寒いと言い出す。これまでずっといい天気だったので油断して薄着で出てきたという。コーヒー飲みたいですねーと言っているうちにカンピにたどり着く。ここはもう中心街。
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カンピ礼拝堂が野ざらしのコップのように雨を受けている。これは教会ではなく、礼拝のためのパブリックスペース。中国人ペアは先日すでに入ったのでもういいとのこと。
みんなでカンピのショッピングモールに入り、中華4人は買い物、日本人2人はコーヒーショップへ。1時間後に集合する約束。
寒いですね、中国の人たちはタフですねえ、とか世間話や業界話で時間をつぶし、さっき別れた場所に戻るが誰もいない。しばらく待つと偶然、電車で別れたフィンランド人が通りかかる。なんでも、これから飛行機に乗り、さらにバイクで5時間走って実家に帰るという。実家はラップランドにあるとのこと。飛行機まで1時間しかないけどそれでもよければ、ということで彼も夕食に合流。

しばらくして台湾ペアが合流。何を買ったの?と聞くと、ムーミンの音の出る絵本を出してくる。Oh,ムーミン…What?…This is ムーミン…隣でフィンランド人の彼も頷いているので間違いないが、台湾ペアは要領を得ない表情。台湾では違う呼び名なのかもしれない。
フィンランド人の彼が絵本を手に取り、戯れに数行読む。台湾ペアの一人が慌ててスマホを取り出し、録音するのでもう一回読んでくれとせがむ。Oh,Okay…ムーミンペラペラペラペラ…当然だがタイトルの最初のムーミン、以降はなんと言っているのかさっぱりわからない。
ショッピングモールの1階で子供向け絵本を朗読する親切なフィンランド人と懸命に録音する台湾人ペア、横でニヤニヤ見ている日本人ペア。1ページ読み終わるごとにフィンランド人の彼がボタンを押し、様々な効果音が流れる。

シュール。

数ページ読んだところで中国人ペアが合流し、朗読会はお開き。フィンランド人の彼の案内でショッピングモール内のタイ料理店に移動する。
注文した料理を待ちながら、フィンランド人の彼が色んな写真を見せてくれる。実家はラップランドにあって、時々オーロラが見えるんだよ。僕もラップランドに住んでて、高校までそこに住んでたんだけど、近くに大学がなかったから、ヘルシンキの大学に通ったんだ。就職もヘルシンキでしたんだけど、今は他の街に住んでる。今日はこれから実家に帰るんだ。飛行機まであんまり時間ないんだけど、料理まだかなあ。
彼が店員を呼んで、フィンランド語で何か言う。よー、と店員が答えて奥へ引っ込む。急かしてみたよ、うまくいくといいな。…冬はスキーしたり、自転車に乗ったり。…自転車?転ばないの?…大丈夫、タイヤがこんな太いんだ、と指を開いて幅を示してくれる。
料理が来たところで中国人ペアが写真を撮ろうと言い出し、店員に頼んでみんなで記念撮影をする。
台湾ペアがオーロラの写真を送ってくれと言い出し、唐突に名刺交換会が始まる。台湾ペアは漢字2文字の名字、中国ペアは漢字1文字の名字。指摘すると、偶然だよ、と笑う。そうなの?
ねえあれはスシレストランだよね、あの字は何て読むの?と中国ペアの一人が聞く。暖簾に文字が染めてある。寿司と鮨。どっちもスシだよ。2文字は音を表す書き方。ス・シ。一文字の方は意味を表す文字。左半分は魚、右半分はtastyという意味。

食べかけのまま時間切れでフィンランド人の彼が立ち上がり、みんなと握手して去る。その後も宴は続くが、食べ物がなくなり、中華4人がもう少し買い物したいということでお開き。

いやー、パワフルな人たちですね、と営業の人が言う。あの買い物にかける情熱はすごいと思う。

一人一人は話せばとてもいい人たちで好感が持てるのだが。

ホテルに帰って他の人と合流して飲み直し。外で寿司を食べて帰ってきたとのことですでにへべれけ、ご機嫌。
明日早い飛行機で帰る人もいるということで、日付けが変わる前に終了。
サンキュー、また会いましょう、おやすみなさい。