弟へのメール(福島第一原発の現時点での安全性について)

弟から、

という質問が来たので、なるべく分かりやすく書いたつもりのメールを晒しておく。
細かいところはいろいろツッコミどころがあるが、大筋あっているはずだし、16日の状況で書かれたメールとしてはこれで適切なはず。(注:この記事を書いているのは19日)
これはEvernoteに残していた下書きだが、メールとして送った文章にはもう少し書き足してある。メールを取り込むのが面倒なので、下書きの方を晒す。

いろいろあって説明が難しいですが、やってみます。
原発事故というと真っ先に思い浮かぶのがチェルノブイリだと思いますので、それとの比較で話をします。

チェルノブイリでは高い出力が出ているときに、さらに出力が上がって圧力容器を破壊するほどの爆発があり、放射性物質が重いものも軽いものも発電所施設の外へ爆散しました。

福島原発では原子炉は制御棒を全部挿入してスクラムして出力はゼロになっています。今、水を沸騰させているのは、核分裂後の物質から出ている「崩壊熱」という熱です。通常はポンプを回して水を送り、温まった水を海水で冷やしてまた送り込み、徐々に冷やしていくのですが、今回は津波でポンプに電力を送るための発電機が回せなくなり、電力がないため、海水で冷やしています。

冷却が追いつかずに沸騰し、燃料が一部露出して冷やせなくなって溶けており、核分裂後の物質のうちガス状の物質が沸騰で出た水蒸気と共に炉内にたまり、圧力を下げる目的で水蒸気を外に出すときに一緒に放出されています。
このガスは非常に軽いので遠くまで飛びますが、放射性物質としては弱く、また、どんどん拡散していきます。発電所の近くで放射線量が増えたり減ったりしているのはそういうことです。一部は放射線を出したまま遠くまで届いているようですが、健康上何か問題が出る量ではないです。

核分裂後の物質のうち重いものは、蒸発せずに圧力容器の中にとどまっています。これがチェルノブイリといちばん違うところで、外に出ると危ないものはまだほとんど圧力容器の中にあります。

燃料が溶けて圧力容器の底に固まると、また臨界になって出力が出始める恐れがあります。実際に臨界になるかどうかは分かりませんが、そうならないように、懸命に海水で冷やそうとしているところです。

今のところこれがうまくいっていて、圧力容器の圧力は危険なレベルには達していません。それはつまり、燃料がたくさん溶けるという状態には至っていないということです。
このままなんとか燃料を全部水浸しにできると、徐々に燃料の温度を下げることができると思います。崩壊熱も、完全にはなくならないもののだんだん減ってきますので、いつかは沸騰しなくなります。そうなれば完全にセーフです。

4号機などの燃料プールにある燃料は既に十分冷えていたのですが、崩壊熱は出続けていますので、徐々に水温が上がってきています。これについては、プールの上から直接水を入れる方法を検討しています。こちらは圧力容器内の燃料とは違って十分温度が下がっているので、減ったら足す、という運用で十分低温に保つことができます。その足し方を、いま検討しているところです。

長い話になりましたがまとめると、このあとさらに事態が悪化したとしても、チェルノブイリのように遠くまで危険な物質が飛散することはなく、もし圧力容器が壊れて、放射性物質が放出されて多量の放射線が出てもせいぜい20km離れていれば十分安全、という判断で、20kmの避難指示が出ています。20kmといってもそこには住居がたくさんあり、発電所もあります。入れなくなると困りますので、懸命に冷やそうとしているところです。

20kmの圏外、例えば東京に飛んで来るのは、危険性の低いガスだけです。どうってことないです。安心して下さい。