高齢者が引き起こす交通事故は増えていない

最近テレビやニュースでやたらと高齢者の交通事故が取り上げられており社会問題化されているが、はっきり言っておく。

高齢者が引き起こす交通事故の件数は増えていない。

警視庁交通局交通企画課による交通事故統計(平成28年10月版)

14ページに交通事故を起こした運転者の年齢層別の集計がある。表17だけをみると高齢者の事故が3割近くを占めているわけだが、これは免許所有者の人数構成を反映したデータではない。しかも恣意的に65歳以上という、他の年齢層より広い幅をまとめて集計しており、多くなるのは必然と言える。人口構成比の推移を反映して評価しないと、このような誤った見え方になってしまう。

表18は免許所有者10万人あたりの事故数を集計している。これをみると、高齢者の起こした交通事故の件数も、全体のトレンドに沿って減少傾向であることは明らかだ。

比較的多く見える75歳以上を見ても、10年前の52%くらいまで減っている。表17の75歳以上の事故数は10年間でほとんど変わっていないことから、「75歳以上の免許所有者は増えているが事故数はほとんど増えていない」と読むのが正しい。65歳以上でまとめても、この傾向は同様だ。つまり、高齢者の免許所有者は、事故を起こさない人の割合が増えているのだ。運転しないと事故は起きないので、もしかしたら、免許を持っていても運転していない人の割合を見ると、高齢者ではその割合が非常に高いのではないか。そうであれば、高齢者から免許を取り上げることは、根本的な対策にならないと考えられる。

むしろ目立つのは、この資料にも特筆されているように24歳までの若者、特に16〜19歳の未成年者であり、あえて年齢層別に取り上げて対策を打つならこの年齢層であることは明らかだ。まあそもそも免許所有者数が少ないので効果は限定的だろうけど。

 

余談になるが、この資料の3ページを見てほしい。年齢層別の交通事故死者の推移だが、圧倒的に高齢者が多い。統計的に有意とはこういうことを言うのだ。高齢者は守るべき存在であり、責めるのはお門違いというものだ。

 

結論:マスコミの偏向報道は目に余る。みんなちゃんと数字を自分で確かめないと騙されるよ!