人事を尽くして天命を待て

普段恋愛ものはあまり読まないのだが、これはとても面白く読んだ。

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女


死ぬまで18なオトナ向けの恋愛小説である。

京都を舞台装置にしたのがとても上手く機能している。どの逸話もだんだん常軌を逸した展開に飲み込まれていくのだが、それが京都ならあってもおかしくないかも、と思わせてしまう。京都にお住まいの方々には申し訳ないが、京都にはどこかしらそういう胡散臭い、ミステリアスな舞台装置が路地裏からガラガラと現れてきそうな雰囲気がプンプン匂っているのだ。
実在の地名や情景描写もうまいこと盛り込まれて、話に説得力を付け加えている。特に京都大学の、どこに何があるんだかよく分からない雰囲気がうまく出ている。
毎度奇想天外な展開に毎度御都合主義なオチがつくのだが、それが嫌味にならない。一つにはストーリーテラーとして主人公の男女二人が交互にそのときの経験、自分の感じたことを後になって振り返る語り口で述べられていることがある。主観的な視点を二つ混ぜることで、その当人はそう感じた、しかし他の人には別のストーリーがある、という、ごく当たり前のことをさらりと読者に納得させる装置になっている。奇想天外な話も、別の視点からは必然であったりするのだ。もう一つには、なんだかんだ言って奇想天外な展開になった以上は御都合主義的なオチを、読む側も期待しているのだ。そしてその期待にすとんと落ちる結末を、毎回もたらしてくれる。そんな物語の力がこの小説にはある。
個人的な感想としては、やはり自分も大学生のころ、せっせと外堀を埋めるわりには解決を先延ばしにしていた日々を思い出したりもした。結局は天命を待つしかないし実際に待ったのだということ。新しい出会いがたくさんあったということ。そして今、自分が幸せだということ(てれ
若いって、いいよね。