翻訳教室

翻訳教室

翻訳教室


柴田元幸さんが受け持った東大文学部の講義録。毎週テキストとして英文小説の一節が取り上げられ、それを学生と柴田氏が訳して、それぞれの訳のいいところ、直すべきところを学生と論じ合うという内容。最初は学生側におずおずとした雰囲気があるのだが、回を経るにつれて学生がメキメキと力をつけ、最後のほうは柴田氏をして「改版するときはいただき」とまで言わせる訳も現れる。なんというか、読んでいてとても気持ちいい一冊。

そういえば昔は

英語の文章を和訳するのが結構好きだった。中学校のころ教科書に出てきたトムソーヤーの一節を一生懸命訳したのが始まりだと記憶している。あれは本当に心躍る体験だった。何しろ原文探せばたぶん図書館にあるのに、意地になってきちんと訳したもんなあ。今にしておもえばたぶんつたない日本語だったと思うけど。
大学時代はクラスにテキストの翻訳のコピーが出回ったり、ガールフレンドの講義のテキストを頼まれて訳してあげたりとかもした。なぜか次の学年でも同じコピーが出回っていて笑った。別に自慢でもなんでもなく、人の役に立てたことがちょっと嬉しかった。本当の意味で役に立ったのかどうかは謎だけど。

和訳の難しさ、楽しさ

英語の文章、特に小説などを和訳するときに一番難しいのは、英文と等価な表現の日本語は実は存在しないことが多い、ということだ。だから英文のニュアンスをどうにかして「よく似た」日本語に置き換えていく。それが難しくもあり、また面白くもあるわけだが。「翻訳教室」は、そのへんの柴田氏なりのノウハウを少しずつ披露しながら、学生たちに翻訳の面白さを伝えていくという内容になっている。また、ジェイ・ルービンや村上春樹らが講義に現れて、翻訳の世界の広さを垣間見せて去っていく。

学生のころは

英語が好きだった。無邪気に英語を日本語に置き換えるのが好きだったのだと思う。結果を評価されることもなく、ただ趣味的に英語を翻訳していた。中学校のころNHKラジオで基礎英語とか続基礎英語とか英語会話とか聞き倒して、英会話の学校に通ったり、会社でも業後に英会話の講師(有料)を読んで勉強したり。でも英会話の勉強はあまり身につかなかった、というか身が入らなかった。今思えばただ単に「英文和訳」が好きだったのであって、「英会話」にはあまり興味なかったのだと思う。
そんなわけで体系的に英語の勉強をしたことがない。受験英語もろくに勉強しなかったので単語とか慣用句とか、必要に駆られて辞書で引いたことのないものはぜんぜん知らない。英単語の暗記本は全然憶えられなかった。

そのくせ勉強法とかいうのもアレだが

英語を勉強したかったら、文法とか単語とかおいといて文章をたくさん読むのが一番いいと思う。分からない単語や言い回しを辞書で引く。慣用句はどの単語を引くかとか、コツがあるけど、そのうちなんとなく慣れる。英文のリズムみたいなものをつかめないと、単語をいくら知っていても、文法をいくら知っていても、結局ちゃんと読めないのではないだろうか。

電子辞書欲しい

でも単語知らないと文章が読み進められなくてけっこう不便。電子辞書欲しいなあ。電子辞書引きながら英字新聞とか読みたい。
もし今、大学生になるなら、迷わず英文科とかに進むんだろうなあ。全然金にならなさそうだけど(わら

おすすめの一冊

というわけでずいぶん長いレビューになってしまったが、英文を和訳することが好きな人にはぜひオススメの一冊。
…でも、個人的には柴田元幸よりは村上春樹の訳し方とテキスト選択の方が好きです。