生きざまを侵食していく現実

新進気鋭のライターが、ある日突然ガン宣告を受ける。余命は2年。
彼はそれすらも書こうと心に決める。よくある感動的な闘病記ではなく、自分の生きざまを読む者に刻みつけるような日記を書こうとする。
初めのうちその試みは確かに機能する。読む者はそこに彼の生きざまを見るし、彼自身がそう信じようとする「まだ死ぬわけにはいかない」という希望を信じられそうに思う。
しかし彼は日々確実に弱っていき、生きざまは余命2年という現実に侵食されていく。ライターの日記は闘病記に変質し、クールを装う文体の、装丁の、ページの端から、病が滲み寄ってくる。
その現実が読む者を戦慄させる。作者はこう呼ばれることを拒絶するだろうが、これはやはり闘病の記録なのだ。