本を読んで泣いたのは久しぶりだ
母親から拒否(ネグレクト)される娘と、彼女に関わる人々の心の変化を描く物語。
最初は「描写が薄すぎる」と思いながら読んでいた。あすかの心についての描写が弱く、心の中が伝わってこない。しかし読み進んでいくにつれて、彼女の心の苦しみは彼女だけのものではなく、かつて彼女の母が抱いた苦しみであること、そして彼女に関わる全ての人の内面にある、普段は目を背けている弱さ、苦しみ、そうしたものと同じであることが明らかにされていく。
祖父母の愛情のもと、自然とのふれ合いで彼女の心は回復し、強くなる。しかし彼女を愛してくれた祖父母の中にもその弱さはやはりあるのだ。そして読んでいる僕の中にもその弱さはある。もちろん、あなたの中にも。
彼女に関わる人々は彼女を通じて自然の恵みを分け与えられ、強さを手に入れる。彼女自身もしなやかに成長していく。あすかの両親も心の中の弱さを見出し、彼女を愛そうとする努力を始める。
この物語で大きな役割を果たすのは彼女の担任教師・橋本と兄・直人だ。彼らがあすかの心の苦しみに気づき、それを取り除こうという真剣な努力があったから、みんながここまで自分と向き合うことができた。
そんな人にワタシもなりたいと思う。…やばい、書いていたらまた泣けてきた。