ユーザたちは、リンクをたどるときの明確な思考モデルを形成済みで、それはいくつかの要素に分けることができる。
- リンクをクリックすることは、別の場所に移動する。
- クリックすると、前にみていたページは消える。
- 新しく読み込んだページはウィンドウに読み込まれ、前にみていたページと入れ代わる。
- まずは、新たに読み込んだページの最上部がみえる。
- 戻るボタンは、以前のページに戻る。
ほとんどのクリックがこのような動作をするため、ユーザたちは、ウェブがこのように機能するだろうという、強い期待値を持っている。論理的で、簡単な思考モデルだ。
ワタシは違う。
ワタシは日ごろFirefoxとTab Mix Plusを使用しており、リンクをたどるときの明確な思考モデルを形成済みで、それはいくつかの要素に分けることができる。
- リンクをクリックすることは、別の場所に移動する。
- クリックすると、新しいタブが開く。
- 新しく読み込んだページは新しいタブに読み込まれ、そのタブが新たにフォーカスされる。
- まずは、リンク元の文脈に即した部分の冒頭がみえる。
- 戻るボタンは、以前のページに戻る。
ほとんどのクリックがこのような動作をするため、ワタシは、ウェブがこのように機能するだろうという、強い期待値を持っている。論理的で、簡単な思考モデルだ。
何がいけないのか。ずっと前から違和感を感じていたJakob Nielsen博士のAlertboxの不自然さがやっと分かった。それは、「ユーザたち」=「Jakob Nielsen博士が定義するユーザ像」だということだ。
ユーザたちの思考モデルの全 5 要素すべてにページ内リンクは反している。
- ページ内リンクは、新たな場所に移動する代わりに、ウィンドウをスクロールさせる。これはユーザを混乱させることになる。新しい情報を得られると思っているのに、クリックする前に既にスクロールしてページ全体をみていた場合、既にみたことのあるコンテンツを再びみることになるからだ。
- 前のページは、ウィンドウに残ったまま消えない。しかしながら、ユーザたちは違うページをみていると思いこむため、「新たな」情報が既にみた情報とどこが違うのか探し始める。明らかに無意味な作業だ。
- 異なるページがウィンドウに読み込まれない。同じデータの違う部分が表示されているだけだ。
- ページの最上部が表示されないで、典型的には、ナビゲーション・バーなど、普通はページ上部にあるデザイン要素がない、ページの中間部分のどこかに移動してしまう。
- 戻るボタンをクリックしても、前のページに戻れない。同じページの中で、以前スクロールされていた場所に戻るだけだ。これは、戻るをクリックする前に、ページの上部にスクロールしていたユーザにとっては 2 重に混乱させる原因になる。
ページ内リンクと戻るボタンのクリックを数回体験すると、ほとんどのユーザは、サイト内でどこにいるのか、完全な混乱状態におちいる。私たちの調査では、典型的にページ内リンクは、節約する時間よりも、遙かに多い時間を無駄にすることがわかった。ユーザたちが、同じコンテンツの中を何度も行ったり来たりして、同じものを繰り返し読んでしまうことに、なるからだ。
ワタシの考えは違う。
ワタシの思考モデルの全 5 要素すべてにページ内リンクは反しない。重要なのは、文脈が繋がっているかどうかだ。
- ページ内リンクは、新たな場所に移動する代わりに、新しいタブを開く。これはワタシを混乱させない。既にみたことのあるコンテンツを再びみていても文脈が繋がっていれば特に違和感はないからだ。
- 前のページは、以前のタブに残ったまま消えない。しかも、ワタシは同じ文脈の違うページをみていると思いこむため、リンク元の文脈で既に見た文章が持つ意味を考えることになる。無意味な作業ではない。
- 異なるページがウィンドウに読み込まれないが、元のタブと文脈が繋がっていれば、特に違和感はない。
- ページの最上部が表示されないで、典型的には、ナビゲーション・バーなど、普通はページ上部にあるデザイン要素がない、ページの中間部分のどこかに移動してしまう。しかしナビゲーション・バーが見たければ、スクロールしてページ上部へ移動すればよい。そもそも、新しいタブが開いた時点で文脈の繋がりを期待しているワタシにとって、ナビゲーション・バーは邪魔なだけだ。
- 戻るボタンをクリックしても、前のページに戻れない。新しいタブを開いたのだから当たり前だ。タブを閉じるか、元のタブをクリックすれば、元の文章に戻ることができる。混乱は全く生じ得ない。
ページ内リンクを新しいタブで開くことにより、サイト内でどこにいるのか混乱しそうになっても、元のタブに戻ることで元の文脈に復帰できることが保証されている。同じコンテンツの中で同じものを再度読むことは決して無駄ではなく、文脈が異なれば以前は理解できなかった文章も正しく理解できるようになる可能性は高くなる。
この文章を読んでいるあなたの感覚はどちらに近いだろうか?
Webをさまようユーザたちは、それぞれ様々な方法でWebページを見ており、統一的に有効なインターフェイスはそもそも存在し得ない。「ユーザたち」と十把一からげにする論理展開にそもそも無理があるのだ。しかも(少なくとも日本では)一定のシェアをもつタブブラウザによるWebブラウジングでは、ページ内リンクは決してブラウジングを混乱させることはないのだ。