インフルエンザの予防と治療について考える

日曜日の未明にインフルエンザを発症した。

体温は37℃未満。激しい頭痛と喉の痛みと咳と全身の倦怠感。あと鼻水。

鼻水は多分関係ない(花粉症?)けど、インフルエンザなら家族に伝染さないように早く治したい。まだ判定キットで判定できるかどうかわからないタイミングだけど、家族をさらなるリスクに晒さずに自力でいける程度の近所で日曜日空いている医療機関は午前中に1箇所しかない。ので診察時間になったら電話して診察してもらえることを確認し、さっさと着替えてマスクを着用してその医療機関へ向かう。

当然同じことを考えた近所の皆さんが殺到しているわけでものすごく混んでいる。立錐の余地もないので階段に座り込んで待つ。問診票に「希望する診察・治療」という記入欄があり、インフルエンザ判定の項目があるので迷わずマルをつける。私の勤め先はインフルエンザに罹患したら有無を言わさず5日間出勤停止なのだ。インフルエンザじゃないならないでちゃんと確信を得ないといけない。

長い待ち時間を耐える。判定キットを使うまでに1時間半、そこから診察まで30分、会計が済むまでさらに1時間。うっかり向かいの薬局に入ってしまったら、そこも座るところがないくらい混んでいる。薬を受け取るまで2時間。

診察では医師から、インフルエンザの判定は陰性だったと言われる。だが熱がないのにこれだけ喉が炎症を起こしていて、頭痛があるのは、この季節ほぼ間違いなくインフルエンザだとの診断。熱が上がらないのはB型だろうと言われる。医者もいい加減たくさんの患者を診察して投げやりになっているのか結論を急いでいる印象。イナビルと解熱剤を処方された。

帰宅してイナビルを使う。使い方が難しい。これは説明書をよく読まないと間違えるね。服用は1回だけなのでタミフルよりは面倒が少ないかも。

そこからは家の中で隔離されてマスクをつけてひたすら横になって安静にする。家族にうつさないため、部屋を出るのはトイレの時だけ。食事もベッドの隣で一人で食べる。時々食欲がなくて、普段なら食べられる量を残したりする。そんな時に体温を測ると少し体温が上がっていたりして、体は正直だなと思う。体温が上がったと言っても38℃まで行かないので、結局インフルエンザなのかどうか確信が持てないけど、医者がそういうんだからそうなんだろうと思って勤め先にはインフルエンザに罹患したので5日間休むと連絡する。

3日目、熱は上がらなくなったがまだ少し頭が痛い。咳も少し残っている。トイレに行くとなぜか血尿が出る。排尿時に陰茎に痛みがある。なんだこれ。インフルエンザで血尿とか聞いたことない。

平日なので、日曜日に行ったのとは別の、かかりつけの医療機関に行く。尿検査。コップを当てがおうとしてふと下着を見ると真っ赤に染まっている。スプラッタ。尿も出始めと最後は真っ赤な血の色。俺死ぬんとちゃうかと呟いてしまう。

診察を受ける。インフルエンザと血尿は無関係とのこと。背中を叩かれたが全然痛くないので腎盂腎炎は否定。レントゲン撮影しても石が映らないので結石も否定。尿路感染症でしょうということで抗生物質を処方される。

インフルエンザはそのまま回復。血尿は抗生物質が効いたのかその日のうちに収まり快方に向かってよかったよかった。

そんな体験を踏まえつつ、さてここからが本題。

僕は重症化しなかったけど、なぜ重症化しなかったのか。

  • 事前にワクチンを予防接種していたから軽症で済んだ
  • 早めにイナビルを服用したから軽症で済んだ
  • 体力があったので軽症で済んだ
  • 必要以上の活動をせずに安静にしていたから軽症で済んだ
  • そもそもインフルエンザじゃなかったから重症化するわけがない

どの可能性も否定できない。

僕は最初の2つをきちんとやったことが自分のためには大事だったと思っている。できることはやっておくということだ。これを怠って重症化してから病院に駆け込むというのは愚の骨頂だとさえ思っている。今回の場合は回復が遅れていたら血尿への対応にも支障があったかもしれない。

 Vol.021 インフルエンザで「早めの受診」は間違いです! | MRIC by 医療ガバナンス学会

この論文では、一言で言うと、症状の軽いインフルエンザ患者は病院に来るなと言っている。しかしこの論文は、患者がなぜ病院に来るのかということを突き詰めずに、医療現場の負担を減らすことを目的として、そのための解決方法として軽症のインフルエンザ患者は病院に来るなと言っているので、患者には何のメリットもないただの空論になってしまっている。

患者は重症化したくないから、軽症のうちに治してほしくて病院に来るのだ。インフルエンザは重症化すると命に関わる病気なのだから、重症化したくないと考えるのは至極当然のことだ。

インフルエンザの厄介なところは、ただの風邪と区別しにくく、そのくせ治療薬が医師の診断なしでは得られないことだ。病院に行けば、迅速判定を受けられて、薬ももらえることはみんな知っている。そりゃみんな病院に行くでしょう。

つまりこれは患者に十分な判断基準と薬を病院経由でしか与えない医療システムの問題なのだ。そのくせ病院に来るなと言ったところで誰が従うはずもないのだ。

軽症のインフルエンザ患者に病院に来てほしくなければ、まず予防接種を義務化して発症者を減らし、それでも発症した人への診断・治療として迅速判定キットと抗ウイルス薬を市販すればよい。その上で、症状が悪化した人だけ病院に来いと言えばよいことだ。

インフルエンザの流行は病院で起きるのではない。放っておいても子供たちは学校へ行き、大人は満員電車に乗って通勤するのだ。伝染させないなんていうのはどだい無理な話なのだ。

現在の医療システムの中で物事を考えているとパンデミックとか公衆衛生とか耳障りのいい言葉で自分を正当化することしか思いつかない。物事の本質として何を防ぐべきか、そのためにはシステムをどう変えて行くのがよいのか、そういうことをきちんと考えて論じてほしいと思う。