5年間飼っていた犬が死んだ

6月28日の夕方に、飼っていた犬が息を引き取った。

元々は妻の実家で飼われていた犬だったが、妻の両親が体調を崩して犬の面倒を見られなくなり、犬の体調も相当悪化しているのを妻が見かねて、強引に引き取ってきたのだった。

散歩もままならないため脚力が弱っており、皮膚病もかなり進んでいたが、散歩に連れ出し、薬入りのシャンプーを何度も浴びせて洗った。

体力はみるみるうちに回復し、そこから皮膚病も少しずつ改善してシャンプーも要らなくなり、数年は元気に暮らしていた。

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1年半前に神経の不調から体調を崩し、ステロイドの錠剤を服用させるようになった。
獣医さんにはもう長くないと言われたがそれから1年近くは散歩にも連れて行き、薬の影響もあって食事もこれまで以上に食べ、薬を飲む以外はいたって元気に過ごしていた。

半年前くらいから散歩を億劫がるようになり、獣医さんにももう散歩は無理にさせない方がいいと言われてからは、家の中でオムツを巻いて一日中寝て過ごすようになった。

5月の連休中に突然体調を崩して酸欠になり、ステロイドを大量に注射されて回復し、ステロイドが切れたらまた調子が悪くなって注射して、というのを繰り返すうち、あっという間にやせ衰えて立てなくなった。
食欲はあったので身体を支えて食べさせたが、いま思うとたぶんほとんど栄養を吸収できていなかったのだろうと思う。

やがて自力では起き上がれなくなり、寝返りも打てなくなり、しきりにクンクンと鳴くようになった。看病する人間の神経が保たないので、夜は鎮静剤を飲ませるようになった。犬も落ち着かなくて立ち上がろうと足をバタつかせたりしていたので、鎮静剤で体力も温存できたのではないかと思うが、副作用で寿命を縮めたかもしれない。今となっては確かめるすべもない。

1週間もしないうちに食欲もなくなって、エサを食べなくなり、それからさらに数日で発作を起こして亡くなった。食べなくなったらもう延命はやめようと話していたので、ある意味では予定通りだった。

最後の日にたまたま休暇を取って家にいたため看取ることができたのは幸運だった。
そういう、空気を読んで行動するようなところのある犬だったから、僕らが家にいるタイミングを見計らって頑張るのをやめたのかもしれないと思う。

アマゾンの段ボール箱にバスタオルと保冷剤を入れて犬を安置した。エサとおやつと昔よく遊んだぬいぐるみを入れ、花を買ってきて添えた。

ペット専門の葬儀屋さんに火葬してもらった。足型のスタンプを取った色紙を作ってくれた。骨は全て、それこそ足の指や爪までみんなで拾って骨壷に納めた。後にはバスタオルと花とぬいぐるみとエサの焼けた灰しか残さなかった。

どこへ出かけるにも犬の餌やりと散歩を気にしないといけないのは正直大変なことだった。
ペット禁止のマンションに住んでいるため隠れて飼っていた。
でも利口な犬だったし、前の飼い主だった義父によく躾けられていて危険を感じない限りは決して吠えない犬だったので、実際問題としてそれほど迷惑になることはなかったと思っている。そんなことはなくて迷惑かけまくりだったかもしれない。だとしたら大変申し訳なかった。

義父と義母が相次いで亡くなり、子供たちは思春期になり、僕の父は認知症で特養に入居し、母は胸椎骨折で入院してやがて亡くなり…家の中が色々と難しい時期だったが、犬が一匹家の中で安心しきってスヤスヤと眠っているだけで、みんなが救われていた。
この時期に家に犬がいたことは、本当に幸運なことだった。

犬のほうはどうだっただろうか。
元気なうちは僕が帰宅すると走ってきて足元でウロウロして、ひとしきり撫でると納得してどこかに走っていくような甘えん坊だった。
妻と分担して1日2回散歩にも連れていったし、エサも十分に与えたし(体のサイズの割にウンチがとても大きい犬だった)、きっと満足して暮らしていたと信じたい。

小太郎。
うちに来てくれてありがとう。
5年と少し、一緒にいてくれてありがとう。
さようなら。

僕自身は天国なんて信じてないし天国に行きたいとも思わないけど、この犬だけは天国でお義父さんと楽しく過ごしてほしい。
火葬場の煙突から出る湯気で揺れる木の枝を見ながら、本気でそう願った。

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