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「君の名は。」に欠けていたもの

レイトショーで「君の名は。」を観に行った。

終わったら日付が変わるような回だったのに駐車場に出入りの車で行列ができるくらい盛況で、後ろの席に座っていた若者は4回目なのに泣けるとか言っていて、一緒に観に来た息子は終わるや否や3回目も観たいと言い出したくらいなので若者にはたまらない感じの出来映えなのだと思う。

 映画『君の名は。』公式サイト

途中で新宿で雪が降って一人で歩いているところでも出逢えていたりとか、最後はすれ違った後でそのままにしないでちゃんと振り返って、踏切じゃなくてよかったなあとか、秒速5センチメートルのラストシーンとの違いを感じたりしたのだけど。

秒速5センチメートル [Blu-ray]

 でもやはり、期待どおり、期待していたものはそこにはなかった。

たぶんこの映画には、僕が新海誠の映画に期待しているものはないのだろうな、と期待していたとおり、僕がそこに期待していたものはそこにはなかった。

そのことについて書く。

 

途中、時間の経過を描写する手法として、風景は固定したままで信号機がものすごい速さで明滅して雲がものすごい速さで流れて、それで何日も経過した後の場面に推移する、というのがあり、なるほどとても面白い表現方法だと思った。

でもそれは、途中を省略するということでもあり、登場人物と観ている者との間に意識のギャップを生み出すことになる。

 

ご神体までの山道は、最初に口噛み酒を納めに行くときは、老人と一緒の道中とはいえわりと丁寧に時間の経過を描いているが、そのあと瀧が風景の記憶を頼りに探しに行くときは雨宿りだけであっさり見つかってしまうし、3度目には途中まで自転車で上がり、一瞬で走って下りてくる。

 

同じ道のりを何度も描いてもやや冗長だし、ブルーレイに収まる尺にするためには仕方ないのかも知れないけど、探したり上り下りしている本人にはそれなりの思いがあるのだから、もう少しきちんと、例えば思い出を取り出して見せるとか、あってもよかったのではと思う。

 

そういうところを「秒速5センチメートル」ではとても丁寧にやっていたし、だからこそあの長さできちんと観る者の気持ちを揺さぶることができていたのだと思う。

 

僕としては観終わったあとで、「秒速5センチメートル」からごっそり花苗がいなくなってしまったような、そんなスカスカな感触が残ってしまったのだった。