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ノルウェイの森

映画「ノルウェイの森」を観たので感想など。
まず最初に大切なことだけど、この映画は原作のあらすじを2時間半に無理に詰め込むという非効率な努力を最初から放棄している。原作を読んでないと全然話の流れが分からない。というか原作から撮りたいシーンだけ撮って、あと監督の趣味で原作にないシーンを作り足しているので、結果として話の流れなんてものはないと言っていい。原作を読んだことのない人は観ないほうがいい。なのでネタバレでも平気で書ける。
原作の「ノルウェイの森」はとても静かな文体で書かれているが、この映画では登場人物はとことん生身の人間として描かれている。目の前で見せられると当たり前のことだが、この演出はとても有効に機能していて、そうだ、彼らは小説の登場人物だけど、もし本当にこの人達が生きていたのなら、きっとこのように悩み、怒り、叫び、泣き、感情をむき出しにして生きるんだろうなと思った。いいもの見せてもらいました。
あとセックスから逃げてないのも好感度高かった。そこはやはりフランス映画の薫りというか。原作でも性交は重要なファクターなので、そこは逃げるべきじゃないと思って観ていたので、満足感は高かった。
個人的にはいい映画だと思いました。日曜夜のレイトショーだったので、観客は8人しかいなかったが(わら

ワタナベ/松山ケンイチ

登場人物を描くための憑坐に徹するところと、ワタナベ自らの苦しみを描くところで演出が切り替わっているのを上手に演じていた。「僕」感が絶妙。

直子/菊地凛子

ワタナベが帰って行くところで一瞬従いて行きかけたり、キズキだと思ったらレイコさんだったときのがっかり顔とか、原作になかったちょっとした演出が生命感を与えていて素晴らしい。菊地凛子は年齢的には無理がある感じだけど…(わら
心を病みながら生きようと懸命にもがく。生きる縁としてワタナベにすがりつく気持ち、死に引きこまれていく苦しさ、セリフの言い回しや声の出し方がとても上手で、取り乱したり、ささやいたり、笑顔で突拍子もないことを言い出したり、原作に比べると明らかに演技過剰なのだけど全然いやみに感じない、演技というよりも生き様と言うほうがふさわしい演技だった。

緑/水原希子

クールなふりして実は色々と悩み苦しんでいる女性を上手に演じていた。ワタナベに見せる表情が感情に応じて少しずつ変化するところがよかった。嘘をつくときに、突然あからさまに挙動不審になって家の中を逃げまわったり。そうか、緑ってけっこう色々悩んでたんだね。ただの変な女の子じゃなかったんだ。早口・長回しのセリフはちょっと棒読みになってたけど、もともと変なセリフが多いので、まあそんなもんだろうという気もする。

永沢/玉山鉄二

クールでどうしようもない俗物っぷり、何を考えて生きているのかよく分からないところが映画でも上手に描かれていた。演技うまいわこの人。本の表紙を確認するところがいい感じだと思ったけど、ゴミ箱に捨てるくらいならフィッツジェラルドの話もしてほしかった。

キズキ/高良健吾

自殺のシーンをそこまで懇切丁寧に描写するよりも撮るべきシーンが他にあるだろうと思うんだけど。どうせ原作をはみ出すなら「めくらやなぎ」の病院のシーンでも出せばよかったのに。なぜ桃なのか。
なんで死んだのかよく分からないというところをあえて解釈せずに巧妙に避けていたのはよかった。

レイコ/霧島れいか

原作ではかなり重要な役どころなのだけど、映画では影が薄く、ただの「直子の保護者」という感じ。にもかかわらず最後のほうで突然ワタナベと性交したり「7年前に失ったものを云々」とかむりやりなセリフを付け足されて台なしな感じだった。この人は原作では「生き残った」という意味でワタナベの戦友なのだから、映画でももう少しちゃんと取り上げて欲しかった。

ハツミ/初音映莉子

プライドの高い女性を見事に演じていた。レストランでワタナベ相手に代理戦争を始めるところとか、そうか、代理戦争だったんだなと気付かされた。静かな怒りの表情が絶品。

突撃隊/柄本時生

もう少し出番があるとよかったな。ラジオ体操はぜひ見たかった。あと蛍のエピソードとか。最後の置き手紙は余計。