妊婦に席を譲る

会社からの帰り、電車に乗って、空いている座席に座って、途中の停車駅で女性が目の前に立った。カバンの取っ手の紐の部分にバッヂがぶら下がっている。チェーンに吊り下げた、円形のバッヂ。よく見るとコウノトリがピンク色のふろしきをくわえて飛んでいる絵だった。…ありゃ、お腹が大きいよ!妊娠してるじゃん!反射的に立ち上がって、
「どうぞ、座ってください」
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ」
席を譲り、そのまま突っ立っているのもやや気まずい感じなので少し離れた空間まで移動した。
妊婦に席を譲るのは大変難しい。席を譲られたくない女性がいる。妊娠しているように見えて実は太っているだけという女性もいる。妊娠していても服装とか赤ちゃんの体位と女性の体格との関係で非常に微妙な感じの女性もいる。
「おなかに赤ちゃんがいます」バッヂは、妊娠している女性にとってはもちろん、周囲の「譲っていいのかどうなのか微妙」な判断に迷う人たちにも、「私は助力を受け入れます」という意思表示として、有効な判断材料を提供しているのだと思った。