自分が実はホラー好きだということに気づいた。
- 作者: 大山尚利
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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ホラー小説の定型として、最初は穏やかに時間が過ぎていくがある出来事をきっかけにいろいろうまくいかなくなってやがて流血、というのがあると思うのだが、この小説はそれが2段仕掛けになっていて、しかもそれが最初に予告されているということに、その直前で気づけるような構成になっている。
終わったと思ったところで実は終わってないと気づいてしまう。この作り方は素晴らしい。キーワードは「ジロー」(笑)
そしてラスト。なぜそこで金属バットなのか。なぜ昼寝なのか。一見理由が示されていないように見えるが、色々なピースが合わさって、ちゃんと理由を理解できるようになっている。
そう、主人公が最後にこんな行動を選択する理由をワタシはここで説明することができる。この小説はそういう構成になっている。そこが素晴らしい。ただの無差別大量殺人ホラーなどとは一線を画している。
ちなみに理由はこんなことじゃないかと思う。
- 19年前を憶えている者が彼女以外いなかった
- ロビンがいたという確証がどこにもなかった
- ロビンを愛している、忘れないと言った彼女の気持ちを確認することを通じて、19年前の自分、ロビンがいたこと、を確認したかった
- 女からロビンを守れなかったことに対するけじめ、ロビンを幸せにするという約束を、彼女を取り戻して(遅ればせながら)実現しようとした
文章にしてしまうと不条理なことだし、もちろんまったく関係ない男性を殺したわけでそれは明らかな犯罪なのだが、しかし心情は理解できてしまう。読む者にここまでの共感をもたらすことができるということに、作者の力量を感じる。