春の道標

読み始めてしばらくして気づいたが前にも読んだことあるなこれ。

春の道標 (新潮文庫)

春の道標 (新潮文庫)


第二次世界大戦直後の高校生男子が年上の彼女の猛烈アタックに引いてしまい、年下の女の子に猛烈アタックする。
…要約のポイントを間違えてしまっておかしなことになってしまったが要するに今も昔も高校生男子は下半身に正直に生きているということだ。むしろ驚嘆すべきはその「今も昔も」同じコンテクストで物語が読める、共感できる、というストーリーを書いてみせる黒井千次の筆力。
ちなみに猛烈アタックの結果相手のハートを射止めるのだが、そこは当時の事情で彼女には許嫁がいて結局振られてしまってガビーンということになる。
読み終わって感じる「あのときこうしていれば…」という気持ちは、かつて高校生だった男の子なら誰でも一度は感じただろうに違いない気持ちだ。

  • あのとき年上の彼女と上手に付き合い続けていられたら。(いや無理、引いてたし。)
  • あのとき年下の彼女の家に上がり込んで堂々と宣戦布告する大胆さがあったなら。(いや無理、勝ち目ないって)
  • あのとき強引にチューなどしなければこんなに苦しむこともなかったのに。(いや、下半身には勝てない)

と、過去の自分の選択を悔いてみたり、あるいはああするしかなかったと正当化してみたり、そんな経験あるよねみんな。そういうほろ苦い記憶を呼び覚ましてくれる、素敵な小説です。