イエスマン養成術?

404 Blog Not Found経由。
芦屋広太 ひとつ上のヒューマンマネジメント : 5分で人を育てる技術 (5)言うことを聞かない“自信過剰な部下”
弾さんのところでも否定的にコメントされているが、私が特に良くないと思うのは以下の部分。

芦屋:坂本,この「貴方の営業ご担当者様が販売活動しやすいように工夫しています」という表現は,抽象的で意味不明じゃないか。意味が分からないから,「先方へのアピール」になってないんじゃないか。説得力もないよ。ここは,具体的な事例を使って修正すべきだな。どう修正すればいいか考えてよ。
坂本:いや,ここはこれでいいんですよ。この文章はあえて抽象的でいいんです。いろいろ,イメージを膨らませてもらう効果が出ればいいんですよ。
芦屋:駄目だよ。そんなんじゃ「いい加減な提案」と思われてしまうよ。もっと,訴求力を持たせなきゃ。それには,具体的に書いた方がいい。
坂本:なんで,そう言い切れるんですか?絶対正しいといえるんですか。なら,変えますけど。

…ただの喧嘩じゃん(わら
最初に「修正すべきだな」と断言してしまうのが良くない。具体例を加えて先方がイメージを持ちやすいようにする、という方向に持っていきたいのなら、最初からそう提言すればいい。自信過剰なヤツに「ダメ出し」は通用しないのだ。こうすればもっとこういう風に良くなるんじゃないか、と相手の顔を立てておき、あとで抽象的な文言を削って、最終形が自分の持っていきたい形になればいいのだ。
重要なのは先方に訴求することなのだから、自信過剰なやつは自信過剰なまま上手に利用すればよい。いいものを一緒に作り、部下の手柄にしておけばいいのだ。部下が手柄を上げればそれは数字に跳ね返り、上司の手柄にもなる。
しかし一番いけないのは、やはりここだろう。

それは,私が,そういう工夫をしたからです。次長と部長には「口裏を合わせて」おきました。坂本に絶対OKを出さないようにお願いしていたのです。非常にみえみえの仕掛けなのですが,この方法はよく効きます。

坂本君にその仕掛けがバレてしまったらどうなるのか想像してみよう。坂本君は芦屋さんを虎の威を借る狐だと見なし、二度と芦屋さんの言うことは聞かないだろう。それどころか、上司と衝突したときにその上の上司に掛け合うという荒業を使わず、直接自分の案を顧客に持っていくというルール違反をしでかすようになるだろう。これは上司が代わっても無駄だ。坂本君の中に会社というシステムへの不信感が根付いてしまっているからだ。
バレなければいいというのではない。仕掛けは必ずばれる。バレたときに坂本君が素直にその意味を納得できる仕掛けでないと、育成にならないばかりか、そこまでの育成を全てドブに捨てることになるのだ。
それからこれは弾さんも書いているが、こんなのは決して育成ではない。パワーハラスメントで上司の言うことを部下に飲ませているだけだ。直属の上司を通さないと話が進まないと部下に思い込ませただけで、本人の能力は全く伸びていない。それどころか、使いようによっては大変な武器になる坂本君の自信満々キャラを潰してイエスマンを一人作り出してしまった。
芦屋さんの罪は重い。

右手が何をやっているか、左手は知らない

面白いのは、弾さんもITProに寄稿しており、そちらのブログに今回のエントリがほぼそのまま引用されていて、しかも一部削除されていることだ。
小飼弾 404 Title Not Found : 人を育てられると思ったら負けだと思っている
削除されているのは、404 Blog Not Foundにあった以下の部分。だと思う。

未だこんな寝言みたいなことを言って、かつそれで給料が出るとはうらやましい職場である。

ところで、日本の会社の人事というのは、こんな「部下いびり」メソッドばかり流行っているののだろうか?これでは競争力が落ちるのも無理はないと言わざるを得ない。あなたが部下をいびっているその瞬間にも、競合相手はその時間でもっといい提案を用意しているはずなのだ。

この文章を削るところに、ITProの自作自演ぶりというか、執筆者への気遣いというか、なんというか、いい感じである。こういう一言が弾さんの持ち味だと思うんだけどなあ。