将棋が打てるヒトは必読

将棋の世界に一時代を築いたヒーロー、大山康晴十五世名人の晩年の活躍を、その棋譜を中心に綴る伝記。
棋譜が多く掲載されており、手筋についての解説に多くのページが割かれているので、将棋が打てないヒトは読んでもなんのことやらわからずつまらないだろう。
しかし逆に将棋が打てるヒトにとってはこれはたまらない。達人レベルになると将棋も盤面だけの戦いではなく、日頃の言動、将棋連盟の中での立ち位置、過去の対戦成績、などその人の全てが勝敗を分けるものだということがひしひしと伝わってくる。
そしてその中でも群を抜いて強かった大山康晴の強さの秘密、その素顔、生き様を、対局の棋譜や周囲の証言、著者の体験を交えてまざまざと描き出す。古くは仇敵・升田幸三との激闘、最近では現役で活躍する谷川・羽生らとの熱戦、そして病との闘い、そのどれもが目の前で行われているかのようにリアルに迫ってくる。
著者もプロ棋士であり、棋譜の解説が非常に分かりやすい。将棋の勉強にもお薦めの一冊。