人間はカーブに反応できないのか?

同氏は、プロの選手を対象に、毎秒10回転するボールのシュートをバーチャル・リアリティのディスプレーで見せて、それがゴールに入るか否かを予測させた。

経験豊かなプロでもボールの軌跡を予測することができなかった。

ちなみに原文の英語記事はこちら。
New Scientist Eyes are fooled by spinning, curving balls - News
しかし、これは怪しいとワタシは思う。だって、じゃあなんでプロ野球の選手は変化球を打てるのか?バッターが空振りしてもキャッチャーはほとんどの球をがっちりと受け止めることができるのはなぜか。

実験が現実と一致しない結果をもたらすときは、実験の手法に問題があるはずだ。この場合は、バーチャル・リアリティで見せるのがいけないのだと思う。
実戦では、回転をかけたボールはピッチャーの手を離れた後変化する軌道を描きながら運動エネルギーを失い、回転数が下がっていく。そのため曲がろうとする力も弱くなり、キャッチャーの手元ではそれほど大きく変化していない。人間の目には残像の効果もあって手元でより急激に曲がるように見えるが、それでも回転数が減ることを反映したカーブを描くため、慣れればある程度予想し、ボールを打つ、あるいは捕球することができる。
但し、実際にはいろんな要因で回転数はいつも一定ではないし、軌道も常に一定にはならない。投げるのは人間だし、風だって吹いている。だからいろんな変化をするし、時には慣れた目の予想とは違う変化をしてエラーも発生するし空振りもする。
バーチャルリアリティでは回転数は常に毎秒10回転で一定だ。だから、減衰する回転に慣れたプロの選手たちはその軌道を予測することができないのだ。
これを証明するためには、この実験を何百球も続ければよい。さらにプロ選手ではないそのへんの市民も連れてきて対照実験をやるといい。きっとそのうち、みんなある程度正しく軌道を予想できるようになるはずだ。それが「目が慣れる」ということだ。