国内で競争がないのに国際競争力なんか身に付くわけない

日本のソフトウェア産業を活性化するにはどうすりゃええんだ、ということを、政策としてのオープンソース振興とのからみから論じているid:hyoshiokさん。

我国のソフトウェア産業がまったく国際競争力を持たないと言うことは論をまたない。わざわざ統計を持ちだすわけもないのだけど、ソフトウェア輸出入統計対比表*1によれば、2000年の輸出が約90億円、輸入が約9200億円、ざっと言って輸入が100倍多い。圧倒的に入超である。直感的に言ってもOS、各種ミドルウェア、アプリケーション、どれをとっても定番のソフトは圧倒的に米国製である。我国のソフトウェア産業は残念ながら国際競争力がまったくないのである。

ソフトウェアの売上げだけ取り上げて競争力を論じるのは正しくないと思う。少年犯罪が近年増えているという主張くらい正しくないと思う。

競争力とは売上げだけのことではない。もちろん売上げが多ければそれはいいことだが、安くても良質のソフトウェア、良質のサービスというものは存在しうる。それらを実現する一つのツールとして、ライセンスフィーが無料のオープンソースソフトウェアがあるのではないのか。
オープンソース界隈の動きを見ていると、少なくとも日本で見ている限りは、開発者の間に国籍どうのこうのというこだわりは見られない。自分達のプロジェクトにどのような貢献を為してくれるのか、その一点に尽きるのではないか。むしろOpenOffice.orgのように、積極的に各国のNative Language Projectを立ち上げ、各国それぞれの事情に応じた開発へのフィードバック、マーケティング戦略の立案などを委ねて一定の成功を納めるケースも現れ始めている。世界的に見て,というかどこから見てもそうなのだが、日本は日本語という特殊事情を持った一つの「市場」なのだ。輸入額が多いことは日本のソフトウェア産業がダメダメなのではなく,むしろ日本が世界的に「実りある市場」として捉えられていることの現れではないか。日本というソフトウェア市場はすでにグローバリゼーションの荒海に飲み込まれつつあるのだ。なんちて。
日本のソフトウェア産業を振興したければ(そしてそれは日本政府の意向であるようだが)、日本のソフトウェア業界を優遇すればよい。つまり国内からソフトウェアやそれに付随するサービスを買えばよいのだ。それを大手振って採算(あるいはコストパフォーマンス)度外視で実行できるのは、やはり日本政府をはじめとする公共機関以外にないと思う。
しかし国内の業者からサービスを買っても、そのサービスのバックボーンとなるソフトウェアが海外製ではやはり国内のソフトウェア産業への実入りは少ない。それが国内ソフトウェア産業の振興を妨げているのなら、オープンソースソフトウェアを使って原価を安くし、サービスでたっぷり稼げばよいのだ。
…というようなことを考えて2月8日のエントリを書いたわけだが。id:hyoshiokさんの昨日のエントリ。

ソフトウェアというのは機械が作るものではなく人が作るものである。であるから一番重要なのはソフトウェアを作れる人材を日本と言う地域にどれだけ確保できるかどうかにかかっている。継続してそのような人材を供給するためには仕事としてそのような経験をつめるような環境がなければならない。それは取りも直さずビジネスとしてソフトウェア産業と言うものが成立していなければならない。鶏と卵である。

(中略)

産業振興というのは実は世界的なプレイヤーを大量に持続的に排出するような環境を作ることなのかなあと思ったりもする。

そう、そうなんですよid:hyoshiokさん!国内に活発な競争市場がなければ人材も育たない、人材がないのに競争力が身につくわけがない。競争力がないのに国内のソフトウェア産業が振興するわけがない。ひとつ日本政府にはそのへん、今は逆向きに回っているサイクルを正しい方向へ回すべく、喝を入れていただきたいところである。